LIFE LOG(数学教師の独り言)

数学教師/心理学と教育現場

自分の心理学の勉強をここにアウトプットしていきます。生徒との関わり方、先生の心の保ち方。一緒に勉強したい人用。一つ一つの記事は長いのでお時間あるとき、暇なときにでも読んでやってください。

FBI式~モンスターペアレントへの対応術~修正版


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以前に書いた記事を少しでも読みやすく・・・と思って修正しました。

 

テーマは「FBI式~モンスターペアレントへの対応術~」

 

 

教員として働きながら、求めれる能力はたくさんありますよね

教科指導力、生徒指導力、学級経営力などなど・・・

 

その中でも「保護者への対応力」というのは、多くの先生が指針の分からない中で模索して、たくさん失敗しながら磨いている分野だと思います

 

特に怒りをぶつけてきたり、攻撃的にこちらにあたってくる保護者に対して、恐怖心を覚えてそのまま潰れてしまう教員も少なくありません

 

しかし、相手の言動の原理を理解し、正しい指針に則って対応していくことで

 

 ストレスなく保護者に対応していくことができます

 

そして後半の保護者への対応の指針というところですが何を参考にしたかというと

 

この世界で最も「感情的な相手との対話を求められている人

 

それはFBIです

 

オープンソースとなっているFBIの技術を使えばモンスターペアレントくらい楽勝そうじゃないですか?

 

テロリストに比べたらヒステリックおばさんなんて赤子も同然ですね(暴論)

 

 

その手法の一端をここに記しておこうと思います

 

怒りの感情を持った相手が仕掛けてくるストレスコミュニケーションとはどのようなものか、まず理解すること

 

そして、そういった人に対してどのように対処すればよいのか

 

この順番で書いていきます

 

 

 1.ストレスコミュニケーションとは

 2.FBI式モンスターペアレント対処術

 

 

 

1.ストレスコミュニケーションとは

相手に怒りとか恐怖を与えようとしてくるのコミュニケーションのことです。 

不機嫌な人には闘争逃走反応という反応が起こっています。この闘争逃走本能というのは、人間の本質的な本能の一種で、例えばライオンと対峙した⇒闘争か逃走のどちらかに役立つようなホルモンが分泌されるといったような反応です。

現代社会の私たちにもこのような反応が残っていて、興奮状態にある人には「相手から逃げる」か「相手と戦う」のどちらかに素早く対応できるようにホルモンが分泌されるそうです。

そういった状態にある人が、攻撃性を持って挑んでくるコミュニケーションのことを、ストレスコミュニケーションというわけですね。

 

そして、感情は伝染する。闘争逃走反応は伝染する。

 ということもポイントとしてここで挙げておきたいと思観ます。

 

怒りを失っている人に対応している場合に、真っ向から対峙してしまうと、怒りをぶつけられた側にも感情が伝染し、合理的な判断ができない状況まで伝染してしまう

 

ということです。

 

闘争逃走状態にある保護者と話していて、対応している先生まで同じ状態に入ってしまったら、もうどうしようもありませんよね。

 

ここで、こんな研究を参考にどのように対処したら良いか考えてみます。

 

ホリーウィークス博士 (ハーバード大学)の2011年の研究では、ストレスコミュニケーションに対してどのように対処すれば良いか126の専攻研究をまとめて、ホーリー博士の研究でありました。このストレスコミュニケーションに対処する際に大切なのは以下の3つのことがポイントで挙げられました。

①明確性②中立性③抑制表現

の3つです。順番に説明していきます。

 

①明確性

相手に対してはストレートな表現を使いましょう。回りくどかったり、遠慮したりする言い方をしてはいけないということです。中途半端な回答を繰り返していると、「あなたのその煮え切らない態度が余計に子どもだちを不安にさせているのでは!?」と畳みかけるように攻撃してきてしまうということです。

確かに、むにゃむにゃ言っている人が相手ならばさらにいらいらしそうですよね。

 

しかし、ここで大切なのはへこへこへりくだれば良いというわけでもないということです。明確性が大切ということです。

 

相手の要求に応えることよりも、明確に返答することの方が大切ということです。

 

つまり、相手の要求に対して「検討します・・・」という反応は決して良い判断とは言えないということですね。

 

例えば「私の仕事が終わった後で20時(時間外)から面談をしてくれ」という要求に対して と言われても、自分の生活をまげてまで要求を受ける必要はなく「こういう理由(公的な理由)で、その時間は厳しいです。代わりに・・・」ときちんと、こちらの事情という情報を伝えることには問題がさほどないということです。むしろ、無理に「検討します・・・」→「やっぱり無理でした」という事態の方がよっぽど大変だということですね。

 

これが1つ目の明確性でした。

 

 

②中立性

2つ目は中立性です。これは先ほども出てきましたが、どちらの立場にも肩入れせずに、中立の立場からの物事をいうということです。

●学校では・・・

●法律では・・・

●会社でこう決まっていて・・・

など、自分と相手の感情とは別の要因からの発言というものがストレスコミュニケーションに対しては有効ということでした。

 

 

 

③抑制表現

最後は抑制表現です。ストレスコミュニケーションを仕掛けてきている人に最もやってはいけないことは「論破」です。言い負かされると、それを根に持って余計にまわりくどくストレスを与える行動を選択するようになることがわかっています。この結果は決してあなたに良い結果を生まないので、端的に情報を伝えるようなことを心がけましょう。つまり言いたいことあっても抑制して必要な情報だけを伝えましょう。

 

<誤解を与えないように情報を与える>

 

これがポイントです。 しかし、この抑制表現はなかなかに難しくて、これを気を付けながら、相手に対して話すポイントは3つあります。 

抑制表現ポイント①「尊重」

ストレスコミュニケーションを仕掛けてくる人に対して、どうしてもやり返したくなる。でも我慢して会話を続けましょう。良い人を攻撃し続けることは中々出来ません。それを続けていると、自分でも辛くなるし、周りから見たらすごくひどい人だな、となっていきます。 

相手を怒らせようとしてくる人に対して、やり返してしまうと、同じフィールドで戦わなくてはいけなくなって余計につらくなってしまいます。 

いくら相手がこちらを怒らせようとしてきても、相手を尊重する態度、相手に対する敬意は失ってはいけないということです。

 

むかつく相手でも、相手を尊重する態度は失ってはいけない。

言うことはハッキリというんだけれど、いいやつというポジションを守ろうということです。 「愛嬌こそが最大の武器である」という夏目漱石の言葉もありますしね。

 

さらに部分否定、部分肯定という考え方が大切です。

これは何事に関してもそうですが、 <全て間違っている人はいない>というスタンスを守るべきであるということです。

「あなたの言っていることはこの部分については正しい。けれど、こちらから見るとこういう問題もあるから、一緒にこの課題について取り組んで行こう」

というと、否定されている気がしなく、むしろ意見を取り入れてくれているような感じすらしますよね。

 

相手の理論がいくら間違っていようとも、相手を部分的に肯定して、部分的に否定してあげることが「尊重」と捉える。これを覚えておきましょう。

抑制表現ポイント②深堀りしない

 

ストレスコミュニケーションが起こる場面では、本当にみなさんに攻撃してこようとしてくるケースは実はそう多くないです。多くの場合は「誤解」から始まっていきます 

みなさんがした言動によって 

「私の子どものことを馬鹿にしているのか!」

と誤解している保護者に対して

「それは誤解です。私が言ったのはこういう意味で、間違って捉えていますよ。」

と言ってその事実に対して深堀りしていくのは効果がなく余計に相手のストレスコミュニケーションを助長させていく。

 

そう返すのではなく

「そういった風に伝わってしまって、申し訳ございませんでした。こういうことを伝えたかったので、別の言い方をすればよかったですね」

伝え方を訂正しますね、という方向に持っていけば良いということです。

 

指導の方針を否定ではなく、指導の中での伝わり方の問題

という風にすることで

 

指導の方針の問題 ← 教員サイドの課題

 

伝わり方の問題 ← 発信側の課題とともに、受け取り側の問題

 

となるので、その後の話し合いとしてお互いの課題解決に向けて一緒に話し合っていきましょう という流れになるということですね。

 

抑制表現ポイント③言動と人格をセパレート

 

一般的に、相手から攻撃されたときに

「この人はこういう人だったんだ、隠れてた人格が出てきた」

と思ってしまうことが多いです。まあそうですよね。 

けれど、実は大体の場合相手は今まで上手くいってきたコミュニケーションの手法を選択しているだけで、別に攻撃してこようと思ってそうしているわけではないことも多いそうです。 

単に、その人はこれまで上手くいってきたコミュニケーションでうまくいってきたということです。人は一度上手くいったコミュニケーションの手法を繰り返しとる傾向にあるということですね。

 

 

もし相手が強い言い方をしてきた場合には

×私が気に入らないからこんな言い方をするんだ

〇この人はこういう強い言い方で上手くいってきた経験がある人なんだ

 

と考える。理解してあげる。

 

例えば

「自分の子どもが泣いている、めったに泣かないこの子が泣くなんて、よっぽどひどい扱いをされたに違いない」

そのように思って学校に電話する(実際にあったクレームの例です) 

「事情も聞かずに頭ごなしに怒るなんて、指導としてどうなのか。私の娘はこのような事情があったのに、その理由も聞かずにみんなの前で注意するなんてどうなのか」

 と言われる。もちろん、こちらの指導に問題がある場合もあるでしょう、でもそのケースは違いました。このとき教員である私は、 

「この人はこういう親だったんだ。クレーマーの気質があったんだ。怖いな。」

と思ってしまいました。さらに、その後もその親に対して苦手意識を持ったり、あろうことかその子どもへの接し方がギクシャクしてしまったことがあります。本当に自分が未熟でしたと思っています。 

 

けれど、単純にその親は

 

「そうやって学校に電話をしてクレームを言うことで娘との関係を保ってきた人間なのだ」

 

と理解をする方がよっぽど良いということが最近分かりました。相手に言い返すわけではなく、相手のことを自分の中で理解してあげることでゆっくりと自分のストレスを解消していくというのが、正しいストレスコミュニケーションへの対処、というか自分の心を守るために大切な技術と思うんですね。

 

「大丈夫だよ」「平気だよ」「あんまり気にすんなよ」と声をかけてくれる同僚、先輩ありがとうございます。

 

でも、当時者が本当に求めているのは、困っている事象を一緒に分析したり、理解していくための条件を整理していってくれるパートナーではないでしょうか。

 

 

2.FBI式 クレーマーな保護者への対応法

 

さて、長々とストレスコミュニケーションについて書いていきましたが、FBI式の対応法をもとに、指針を考えていきたいと思っています。

 

そもそも、テロリストなどに対峙しているFBIの人たちは特殊な訓練を受けています。この訓練のトレーニング方法などは、実はオープンソースで公開されているんですね。これをかみ砕いてコミュニケーションを取るときの指針にしてしまおうということです。

 

 

 

3つの段階的な指針に分かれていきます。

 

一つ目 共感的ステートメント

 

 相手の共感を強めるような言葉を投げかけるということです。 

「あなたはこういう風に感じているんですね。」

「こういう風に思いましたよね。」

 と声をかけ続けましょう。ポイントは話題を相手の感情に持っていくということです。

●泣いている子どもにスマホの自撮りの画面を見せると泣き止む

●泣いている子どもに鏡を見せると泣き止む

 ということは知っていますか?

 

自分を客観的に見ることで人は少しずつ冷静になっていく

 

ということなんですね。なので、モンスターペアレントからの電話では

 

相手の感情や言動を話題にすることが最も優先すべき

 

ということです。

なので、

「お母さん心配ですよね。」

「もっとこうして欲しいと思いましたよね。」

基本は相手の言うことを繰り返すことで良いんですね。こういう風に返され続けると、相手は自分の感情を表現するしかなくなるということです。 

「ちなみにどのような場所が一番心配でしたか。」

「どこに憤りを感じましたか」

 と話題を振り続けると、相手はどんどん自分を客観的に眺めて冷静になっていく

 

 

 ここで

「いや、お母さん私は・・・」

「学校としては・・・」

と最初に言ってしまうと何が問題かというと

相手は話題が自分から離れていって、感情的になっている自分を客観視できなくなっていく

 

ということです。まず相手を落ち着かせていく。相手の気持ちを、客観視させるための共感的ステートメントです。





二つ目 ベンチング

 これは共感的ステートメントを行っていると自動的に行われることでもあります。

 自分の言葉で自分の怒りや憤りを表現するようになる

 ということがベンチングです。

直接やり取りをするのではなく、のらりくらりと相手に自分自身の気持ちを言わせ続けましょう。

●どこが気に入らなかったのか

●どこに心配を一番覚えたのか

●どこが許せないのか

 これを繰り返し言わせて相手に問い続けましょう。

 

「どこが一番心配でした?」

「どんなことを言われてどう思いましたか?」

「どんな話をされましたか?」

 

これを繰り返す。すると、必ず休止が入ります。なぜならば、理由はすごく単純でずっと話していると疲れるからです。 休止が入った瞬間に、また共感的ステートメントに入りましょう。これの繰り返しです。


共感的ステートメント→ベンチング→休止が入ったら→また共感的ステートメント→ベンチング→・・・

 

いつまでやれば良いかは次のフェイズの説明に繋がります。

 

三つ目 推定ステートメント

 

怒っていた相手に対して、具体的な行動を提案していくフェイズに入ることです。共感的ステートメントとベンチングを繰り返して、冷静になったら具体的な提案に入っていきます。これが推定ステートメントです。

 

ただし、気を付けなければいけないのは、推定ステートメントの途中で怒りが再発したり、無理難題を吹っ掛けられたりすることもあります。

 

その際には決して「検討します」と言わずにまた、共感ステートメントに入って冷静にさせていきます。往々にして、人は期待と行動のギャップで起こります。

 

保護者も「もっとこうしてくれると思っていたのに」というギャップで怒るケースが多いのではないでしょうか。そんなときは、丁寧に共感的ステートメントとベンチングを繰り返して、相手の気持ちを受け止めてあげましょう。

 

<期待と行動のギャップは感情で埋めていく>


ということです。

 

それで、いつになったら推定ステートメントに入ったらよいかというと、20分が目安です。

注意点、根気が要ります。丁寧に丁寧に共感的ステートメントとベンチングを繰り返して、じっくりと推定ステートメントに移っていく。これまでを20分です。

 

なぜ20分という目安があるかというと 

 

闘争逃走反応からノーマル状態に戻るためには20分必要

 

 と言われていることが背景にあります。冒頭で述べたこの状態からノーマル状態に

相手を持っていくことに主眼をおいてゆっくりと話していきましょう。

 

 

 不思議なもので、同じ20分でも先の見えない20分はつらいが「20分後には闘争逃走反応が消える」と思うと、同じ20分でも頑張れるはず。でも長いですよね。大変だ。

 

 

このように

①共感的ステートメント

②ベンチング

③推定ステートメント

を繰り返していくことをFBIの方は訓練されているそうです。

 

 

ストレスコミュニケーションを理解して、さらにFBI式の対処術を学んだいま、少しでも余裕を持って保護者対応に臨めるのではないでしょうか。

 

 

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